社会人になったら気になる給料のアレコレ。
公立学校の先生の給料の中身・内容を掘り下げてみましょう。
この記事を読んでほしい人
- 教員の給料がどう決まるか知りたい人
- 教員の手当について知りたい人
- 教員のボーナスについて知りたい人
地方によって給料は違う?
結論から申しますと、地方によって初任給から違います。
例えば、令和3年度の小中学校の大卒教師の初任給を見てみると
- 東京都の初任給・・・248,700円
- 愛知県の初任給・・・215,900円
- 大阪府の初任給・・・245,000円
となっており、都市部ほど高額になっていることが分かります。
スタートから差があるので、同じような業務でも所得には差がでることになります。
しかし、これは物価などが影響しているため、
一概に『東京は給料が高くてズルい』ということにはなりません。
先生の給料の内容
厚生労働省が公表している、『令和元年賃金構造基本統計調査結果』によりますと、
男女合算の大卒の初任給が、210,200円ということなので、
民間企業と同じか、少し高いということになります。
それでは、この金額がどのようにはじき出されているかみてみましょう。
等級と号給 ~給料の上がり方~
基本給は、『等級』と『号給』により算出されます。
等級
等級とは役職のようなもので、
等級 | 役職 |
1 | (常勤)講師 |
2 | 教諭 |
3 | 教頭 |
4 | 校長 |
となっております。
地方によっては、1~6等級の6段階だったり、
主幹教諭や副校長を『特3級』『特4級』としたりと、
細分化しているところもあります。
このサイトは若手教師や大学生に向けて発信しているのですが、
自分の地方の給料が気になる人は、
『〇〇県(市) 教師 号給』と検索すると、給料の一覧が出てきますので、
『2級』の欄をみると、大体の給料を知ることができます。
号給
上記の一覧表を見ると、『号給』という縦になが~い一覧が出てきます。
例えば三重県の一覧表はこのような感じです。(一覧)
2級の教諭職が一番長続きする可能性が高いので、150号を超えた数になっております。
さて、この号給の意味ですが、
号給の大小 = 勤続年数の長短
と考えてもらって相違ありません。
まず、新卒の初任者ですが、大卒は『2級8号~10号』から始まり、短大卒は2級『1号』から始まることが多いです。
院卒の方は、修士.博士と年数が重なるごとに、号給が増ていきます。
新卒は講師で、何年か後に教採に受かり教諭となった場合も、講師の勤続年数によって、号数が変わります。
公務員が年功序列型賃金といわれる所以です。
勤続すればするほど、号給が上がっていくので、年長者ほど給料をもらっていると考えるが通例です。
しかし、平成28年から、新たに人事評価制度を導入し、
その人事評価の結果を任用、給与などに活用することが決まりました。
そのため、同じ学歴の新卒新採の同期がいても、評価によって給料に差が出ることになりました。
民間企業では当たり前のことですが、評価の判断基準があいまいなこともあり、
現場では非常に混乱に陥る事態となりました。
未だに納得していない方も見受けられますが、
現在もこの評価と給与、賞与が結びついた制度は続いています。
少し話がそれましたが、号給の話にもどります。
一般的に新年を迎えると、号給が増えますが、
評価によって号給の増え方が異なります。
例えば沖縄県を例にみてみます。
総合評価はSS,S,A,B,Cの5段階です。(一覧)
総合評価 | 上がる号給 |
SS | 7号給以上 |
S | 5号給 |
A | 4号給 |
B | 2号給 |
C | 昇給なし |
このように、最高/最低ランクの評価では、7号給以上の差があり、
1~2万円の月給の違いになることも有り得ます。
(実際にはSSを取る人も、Cを取る人も滅多におりませんが。)
毎年、平均的な『A』の評価の場合、
昇給幅は『毎年一万円上がる』と考えておけば良いでしょう。
学校教員の手当 (月額給与の表示金額に含まれるもの)
まずは、下の表を見てください。
愛知県の公務員の初任給表です。
『教育職』は、市役所などの『行政職』や『警察職』と比べて、給料が少し高いことが分かります。
「教員は他の公務員よりもらえるのか~」
と思うかもしれませんが、実際はそのようなことはありません。
その理由が『手当』にあります。
普段あまり気にすることのない『手当』ですが、どのようなものがあるか確認していきましょう。
地域手当
通称『都会手当』などと言われたりもします。
物価が高い地域で働く人が不利益を得ないように、支給されるお金です。
初任給の表示金額には、この地域手当が含まれていることが多いです。
義務教育等教員特別手当
漢字ばかりの手当ですが、昭和50年から始まったものになります。
未來を担う子どもの教育を行う者を少し優遇しようという意図で支給されているそうです。(人材確保法という法律があります)
額は号給で異なりますが1万円に満たないことがほとんどで、2000~7000円あたりの幅で支給されます。
義務教育なので小中学校だけと思いきや、高校教諭にも払われている言葉とずれている手当です。汗
これも初任給の表示金額に含まれていることが多いです。
教職調整額
『手当』の名は冠していませんが、手当とほぼ同義です。
これは、残業代が出ない代わりに、月額給与の4%が払うというものです。
昨今騒がれている『日本の教師働きすぎ問題』の諸悪の根源ともいえるシステムです。
昔の教員の平均残業時間が月に10時間に満たないくらいだったので、
4%払うと、8時間分ぐらいの残業代になるのでちょうどよかったのですが
今ではその10倍の80時間を超えるほどになり、
現実と制度が乖離してしまっています。
しかし、残業代をそのまま払うと財政を圧迫するので払えないという理由で、
ダラダラとまかり通ってしまっている制度です。
2024年1月現在、文部科学省が10%まで引き上げるよう検討しております。
こちらも初任給の表示金額に含まれていることが多いです。
義務教育等教員特別手当と、教職調整額の2つの手当が、
給与の表示金額に含まれることから、見た目の上で教師の金額が多く見えるのです。
実際は、教員以外の公務員は残業代が出るので、遅くまで残っていた人は稼ぎが増えます。
しかし、これは変動するお金のため、給与の表示金額には含まれません。
また、例えば警察官は『危険手当』や『交通整理手当』『警ら手当』など、たくさんの手当があります。
これも変動するので、給与の表示金額には含まれませんが、しっかり懐には入るお金です。
ホームページに載っている金額はあくまでも目安なので、
表示された給与金額に惑わされないよう気を付けましょう。
学校教員の手当(月額給与の表示金額に含まれないもの)
特殊勤務手当
ここからは金額が変動する手当なので、給与の表示金額に含まれない手当です。
特殊勤務手当は、業務によって細分化され支給されます。
全部で4つあるのでみていきましょう。
教 育 業 務 連 絡 指 導 手 当
いわゆる『主任手当』と呼ばれます。
学年主任や生徒指導主任など、指導する立場や連絡する立場の役を担う人に付きます。
高校だと、学科主任や渉外主任なども、この手当の対象です。
この手当が付く主任は大変なのですが、1日200円という破格の安さです!
200円あげるから、誰かに就いてほしいと思わずにはいられない手当なのです…。
教員特殊業務手当
特殊勤務の中でもさらに細分化され、4つあります。
修学旅行等引率手当
宿泊を伴う引率を行った時の手当です。
支給額は日額5100円、学校によっては寝ずの番となることもあり、
割に合うものではありません。
対外運動競技等引率手当
これは中高の先生がよくもらいます。
部活動の大会で土日に駆り出されたときに払われます。
修学旅行と同じく日額5100円です。
非常災害緊急補導手当
非常災害が起こった時に児童又は生徒を保護するようなときに支払われる手当です。
復旧作業の支援などもこれにあたります。
救急業務は日額7500円、復旧業務は日額8000円、
被害が大きいときの業務になると、日額16000円支払われます。
部活動手当
土日に部活動で練習を行った時の手当です。
日額2700円支払われます。
昨今部活動指導員などの活用による、
教員の働き方改革が叫ばれていますが、
令和5年1月現在、まだ時間がかかりそうであり、当分は教員の仕事となりそうです。
特別支援教育手当
特別支援学級を担任している教師に支払われます。
月額12600円です。
月単位で働いていない人は、日額600円となります。
多学年学級担当手当
いわゆる複式学級の担任に支払われます。
日額200円です。
へき地手当
交通条件や自然環境の面で、学習環境が恵まれない地で勤務すると支払われます。
山間部や島しょに所在する学校での勤務がこれに当たります。
へき地の環境の厳しさによって支給額が変わります。
月額給与の4%~25%と、支給金額の幅が広い手当です。
産業教育手当
高校の先生の一部が該当する手当です。
水産や農業に係る産業教育を担当する教員に支払われます。
月額給与の10%です。
定時制通信教育手当
これも一部の高校の先生が該当するものです。
定時制高校で務めている教員に支払われます。
月額給与の5%です。
学校教員の手当(その他)
このほかには、住居手当、単身赴任手当、通勤手当、管理職手当など、
民間企業にもあるような手当が含まれます。
これからは自治体によって金額が異なります。
民間と同じようで違うのが『ボーナス』です。
公務員には『ボーナス』が存在しない代わりに、勤勉手当、期末手当が支払われます。
民間企業と同じように6月と12月に支払われます。
期末手当は、生活習慣上、生計費が時季的に増加することを考慮して支給される手当とされています。
勤勉手当は、職員の勤務成績に応じて支給される手当であり、評価によって変わってきます。
号給のところと同じですが、評価によって、支給額に約0.9~1.1倍がかけられます、
教員の給料のまとめ
今回の記事を総括すると、
- 役職の等級と勤務年数の号給によって給料が変わる。
- 号給は業務評価によって上がり方が違う。
- 教員の給料は、他の公務員より多く見えるが実際はそうではない。
- 教員にしかない手当があるが、額は疲労度に見合っていない。
このような感じになります。
主任になると、業務量と責任が一気にのしかかってきますが、
「1日200円かよ!!」と誰かを呪いたくなります。
まだ主任の役に付いたことのない若手の方は、どうか主任さんを支えてあげてください。
1年ごとの号給の上昇幅は大きな差ではありませんが、
40年後には大きな差になります。
まずは、明確な自己目標を掲げて、1つずつステップアップし、
魅力ある教員を目指して頑張ってください。
そうすれば自ずと、評価も給料も上がると思います!